聖書箇所
2:13 彼らが帰って行くと、見よ、主の使いが夢でヨセフに現れて言った。「立って幼子とその母を連れてエジプトへ逃げなさい。そして、私が知らせるまで、そこにいなさい。ヘロデがこの幼子を捜し出して殺そうとしています。」
2:14 そこでヨセフは立って、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトに逃れ、
2:15 ヘロデが死ぬまでそこにいた。これは、主が預言者を通して、「わたしは、エジプトからわたしの子を呼び出した」と語られたことが成就するためであった。
2:16 ヘロデは、博士たちに欺かれたことが分かると激しく怒った。そして人を遣わし、博士たちから詳しく聞いていた時期に基づいて、ベツレヘムとその周辺一帯の二歳以下の男の子をみな殺させた。
2:17 そのとき、預言者エレミヤを通して語られたことが成就した。
2:18 「ラマで声が聞こえる。むせび泣きと嘆きが。ラケルが泣いている。その子らのゆえに。慰めを拒んでいる。子らがもういないからだ。」
2:19 ヘロデが死ぬと、見よ、主の使いが夢で、エジプトにいるヨセフに現れて言った。
2:20 「立って幼子とその母を連れてイスラエルの地に行きなさい。幼子のいのちを狙っていた者たちは死にました。」
2:21 そこで、ヨセフは立って幼子とその母を連れてイスラエルの地に入った。
2:22 しかし、アルケラオが父ヘロデに代わってユダヤを治めていると聞いたので、そこに行くのを恐れた。さらに、夢で警告を受けたので、ガリラヤ地方に退いた。
2:23 そして、ナザレという町に行って住んだ。これは預言者たちを通して「彼はナザレ人と呼ばれる」と語られたことが成就するためであった。
説教要旨
2020年最後の主日礼拝を迎えました。この年、「あなたの履き物を脱げ。…（出エジプト記3：5）」を年間聖句とし、「信仰の原点に返り…」との標語をもって歩んできました。クリスマス礼拝に続く御言葉に聴いていきます。博士たちが帰って行くと、イエス家族は大きな試練の中に置かれました。主の使いがヨセフに現れ、ヘロデが幼子を殺そうとしているので、幼子と母を連れエジプトへ逃げよと告げたのです。ヨセフは立って夜の内に幼子と母を連れエジプトに逃れ、ヘロデが死ぬまでそこにいました。（v13～v15）マタイはホセア書11：1の成就とし、幼子イエスがエジプトに下り呼び出されることは、イエス・キリストがイスラエルの民と同じ道を辿られること、神のエジプト脱出の御業のごとくご自身の民を救われること、そして神がシナイ山でイスラエルと契約を結ばれたごとく新しいイスラエル「教会」を生み養われることを示しました。ヘロデは博士たちが戻ってこないことが分かると怒り、ベツレヘムとその周辺の二歳以下の男子を全て殺しました。（v16～v17）ヘロデ虐殺の出来事に神は一体どこにおられるのかと思うのですが、マタイはエレミヤ書31章のバビロニア捕囚時の母の嘆きが成就したとします。「成就するためであった（v15、v23）」ではなく、「成就した（v17）」とあるのは、ヘロデの虐殺は神の御業ではなく、ヘロデの罪の業である、しかし、それをも神の深いご計画の中にあることを示しています。エレミヤ書31章は、バビロニア捕囚による嘆きだけではなく、捕囚解放の預言も語られています。先ほどのエジプト脱出と同様、イエス・キリストがイスラエルの民と同じ道を辿られ、神のバビロニア捕囚解放のごとくイスラエルの民を救われることを示していました。イエス・キリストは民を上から離れて罪から救うのではなく、民と同じ道を辿られ、苦しみや悲しみともに歩まれ罪から救って下さるのです。（1：21、23）
ヘロデが死ぬと、主の使いが再び夢でヨセフに現われイスラエルの地に行くよう命じ、ヨセフは幼子と母を連れイスラエルの地に入り、ナザレに住みました。（v19～v23）「これは預言者たちを通して「彼はナザレ人と呼ばれる」と語られたことが成就するためであった。（v23）」「ナザレ人（v23）」とは蔑みを表す言葉でした。イエス・キリストがやがて十字架に架かり、蔑まれ、私たちの罪の身代わりに神の裁きを受け、罪からの救いを与えられることを示していました。ヘロデ王が全ての事を支配しているようで、その背後には神がおられ、治め、神のご計画を進められたのです。悪をも益と用いられたのです。過ぎし一年、コロナやそれぞれの歩みや家族のことで「主よ何故ですか」ということもありました。しかし、神の救いの計画の中で導かれています。そして、その神のご計画の中で主イエスはイスラエルの道を辿られたように私たちの悲しみとともにおられます。
こうして主イエスを通しての神の救いのご計画と御業、新しいイスラエル「教会」が建てられる御業がなされましたが、そこにはヨセフの従順がありました。（v13～15）（v19～v21）ヨセフからするならば神のご計画が全く見えなかったことでしょう。しかし、その一つひとつの置かれた状況において神の言葉に聴き従ったことが神の大いなる救いの御業に繋がっていたのです。（Ⅱコリント1：6参照）信仰の原点に返るとは、神に主導権を明け渡すことです。神のご計画がどうなっているのか私たちは分からないことが多いのですが、与えられている状況の中で主に聴き従っていくことは、どれほど大切な歩みをなしているのかを覚えたいのです。
「あなたの履き物を脱げ。…（出エジプト記3：5）」神のご計画の中にあること、その歩みに主イエス・キリストがともにおられることを信じ、その中で履き物を脱いでいくこと、主に聴き従い自らを委ねていく歩みを続けていきたいと願います。私たちの一つひとつの従順が神のご計画と御業に仕えていることを覚え、一年を終え、新たな一年を迎えていきましょう。