聖書箇所 ローマ5：18～19
5:18 こういうわけで、ちょうど一人の違反によってすべての人が不義に定められたのと同様に、一人の義の行為によってすべての人が義と認められ、いのちを与えられます。
5:19 すなわち、ちょうど一人の人の不従順によって多くの人が罪人とされたのと同様に、一人の従順によって多くの人が義人とされるのです。
説教要旨
パウロは5：12から「聖化と栄化」について記していきますが、5：12～21は聖化と栄化の土台を語っています。5：12～21は「アダム」と「第二のアダムイエス・キリスト」が対比されております。「一人の違反（v18）」「一人の人の不従順（v19）」創世記3章におけるアダムが神の命令を破ったことです。アダムが罪を犯し「死」が入りました。（v12）「死」とは単に「肉体の死」を表すだけではなく、それ以上に「霊的死」、神との交わりを失ったことです。アダムは私たち人類の代表です。国の代表が戦争を行うことを決定することは私たちが戦争を行うことを決定することでありその影響に巻き込まれるように、人類の代表であるアダムが罪を犯したことは私たちが罪を犯したことであり私たちが死ぬ者となったのです。また人類はアダムの子孫です。私たち一人ひとりはアダムの中に内包されておりました。（ヘブル7：10参照）ですからアダムが罪を犯したことは私たちが罪を犯したのであり私たちが死ぬ者となったのです。罪は私たちの代表であるアダムから現実的に私たちに引き継がれています。「不義に定められた（v18）」「罪人とされた（v19）」罪の下に任命されたとの意味です。罪が私たちの主人となったのです。罪を犯すので罪人ではなく、生まれながらにして罪人であり罪に支配されているので罪を犯してしまうのです。
「一人の義の行為（v18）」「一人の従順（v19）」イエス・キリストが神の律法（御旨）に完全に従われ、十字架の死にまでも従われ、私たちの罪の身代わりに神の裁きを受けられ、罪の赦し（義）を獲得してくださいました。完全に律法を守られたので罪の結果である死の中にあることは相応しいことではなく、神はイエス・キリストをよみがえらされました。イエス・キリストは死に打ち勝ち復活されたのです。その救いの御業の故にイエス・キリストを信じる者は「義と認められ、いのちを与えられます（v18）」義と認められるだけではなく、霊的に死んでいた者にいのちが与えられたのです。アダムにある者であった私たちがイエス・キリストにある者とされたのです。クリスチャンは罪の失敗があったとしてもイエス・キリストが王となってくださったことは変わらないのです。罪を犯すことはあっても、罪のうちに生きていられない、罪を意識的継続的に悲しむことなくなし続ける歩みはできないのです。イエス・キリストが私たちのうちに生きておられるのです。これが聖化の基盤です。これがイエス・キリストにある者の事実です。
しかし、私たちは自分の今の姿や歩みを見て「私は新しくされ、イエス・キリストが私のうちに王として生きておられる」ことに確信を持てないことがあるのではないでしょうか。パウロは言います。「あなたがたもキリスト・イエスにあって、自分は罪に対して死んだ者であり、神に対して生きている者だと、認めなさい。（6：11）」「認めなさい」とは「みなしなさい」「考えなさい」との能動的な言葉です。そう自ら考え、そう自らをみなし自覚していくのです。感情ではなく意志の働きです。そしてもう一つは主に自らを献げることです。（6：12～13、17～19）献げるとは「そばに置く」「前に持っていく」との言葉です。聖化は自覚的意志的な面があるのです。人間の側にもなすべき役割があるのです。確かに聖化は主の恵みです。「義人とされる（v19）」と受身形であり、「認めなさい」「献げなさい」と告げた後に6章の終わりには「神の賜物は、私たちの主イエス・キリストにある永遠のいのちです（6：23）」とあるとおりです。しかし聖化はエスカレーターに乗っていくようなものではなく、自分の意志をもって主の律法（御旨）に従っていく歩みにおいて聖霊の恵みによってなされていくのです。
年の後半の最初の主日です。主は私たちに語っておられます。「あなたは新しくキリストにある者とされた。そのことを自覚し、自らを日々わたしに献げよ」と。イエス・キリストにある新しい者とされたことを認め自覚し、自らを日々主に献げ、聖められていく喜びに生きていきましょう。