聖書箇所 Ⅰ列王記13:11~19
13:11 一人の年老いた預言者がベテルに住んでいた。その息子たちが来て、その日、ベテルで神の人がしたことを残らず彼に話した。また、彼らは、この人が王に告げたことばも父に話した。
13:12 すると父は「その人はどの道を行ったか」と彼らに尋ねた。息子たちは、ユダから来た神の人が行った道を知っていた。
13:13 父は息子たちに「ろばに鞍を置いてくれ」と言った。彼らがろばに鞍を置くと、父はろばに乗り、
13:14 神の人の後を追って行った。そして、その人が樫の木の下に座っているのを見つけると、「ユダからおいでになった神の人はあなたですか」と尋ねた。その人は「私です」と答えた。
13:15 彼はその人に「私と一緒に家に来て、パンを食べてください」と言った。
13:16 するとその人は言った。「私は、あなたと一緒に引き返して、あなたと一緒に行くことはできません。また、この場所では、あなたと一緒にパンも食べず、水も飲みません。
13:17 というのは、私は【主】のことばによって、『そこではパンを食べてはならない。水も飲んではならない。もと来た道を通って帰ってはならない』と言われているからです。」
13:18 彼はその人に言った。「私もあなたと同じく預言者です。御使いが【主】のことばを受けて、私に『その人をあなたの家に連れ帰り、パンを食べさせ、水を飲ませよ』と告げました。」こうして彼はその人をだました。
13:19 そこで、その人は彼と一緒に帰り、彼の家でパンを食べ、水を飲んだ。
説教要旨 斎藤成美師
ある日、北王国の王ヤロブアムが偶像の祭壇で香を炊こうとしているところに、神から遣わされた南王国ユダの預言者が現れ、神のことばを語り忠告し帰途につきました(13:10)。
さて、ベテルには老預言者が住んでいました。彼の生活も平気で偽るような日常生活をなしていました。老預言者は、神の人を食事に誘います。当然ながら神の人は断ります。(13:18)。経験豊かな預言者・神の人であれば、こう言われても断ることができました。なぜならば、「御使いが主のことばを受けて、私に」はあり得ないのですから。預言者に神が語る時は、直接に「神の言葉が下った」であり、御使を経由することはないのです。この辺が、若い預言者であったと思わされる理由です。これを知っていれば、神の人は断ることができた筈です。また、ベテルの地では食してはいけないと言ったことをよく考えれば、神のことばが偶像の地ベテルで変更されるはずがないのです。若き神の人は、老預言者と一緒に彼の家に行き、食事に預かることにしましたが、食事をしている最中に、神の言葉が「老預言者」に下りました。「主はこう言われる。『あなたは主のことばに背き、あなたの神、主が命じた命令を守らず、引き返して、主があなたに、パンを食べてはならない、水も飲んではならないと言った場所でパンを食べ、水を飲んだので、あなたの亡骸は、あなたの先祖の墓には入らない」(13:21~22)。ユダの神の人はびっくりし、当惑したことでしょう。まったく信頼していましたから。しかし、騙されたとはいえ、事実は事実です。食事が終わり老預言者の家を出ます。ところが、途中で、一匹の獅子(ライオン)が現れ神の人を襲い、彼は死んでしまいました。これは、神のみ言葉に反した神の人への刑罰でした。しかしまた、あまりにも不可解なこの結末は、老預言者を真の悔い改めに導くための大きな犠牲でもありました。ライオンは神の人だけを襲い、ロバには何もしなく傍にいました。あたかも、誰も触れないように、その現場を保持するかのように見張っていたのです。
老預言者はこの神の裁きを知った時、びっくりすると共に、非常に神を恐れました。神の霊が彼の心に働いたのです。老預言者は悔い改めたに導かれました。13:26で「それは、主のことばに背いた神の人だ。主が彼に告げたことばどおりに、主が彼を獅子に渡され、獅子が彼を裂いて殺したのだ。」と他人ごとのように言っていますが、これが老預言者の告白であったのです。私がやったのだ。私が騙したせいで、神の人は神の刑罰に遭ってしまったという、非常に悔いる心で、この告白をなしたのでした。もし、そうでなければ、こんなことを言う必要もなく、偽る者の常のように黙って沈黙を通せばいいのです。
責任を感じた老預言者は、その場所に出掛けて行き、神の人の遺体をロバに乗せて自宅に帰り、悼み悲しみ自分の家の墓に葬り(13:29)、そして、息子達に伝えます。「私が死んだら、あの神の人を葬った墓に私を葬り、あの人の骨のそばに私の骨を納めてくれ。あの人が主のことばにしたがって、ベテルにある祭壇とサマリアの町々にあるすべての高き所の宮に向かって叫んだことばは、必ず成就するからだ」(13:30~32)。老預言者は神の前に悔い改めて、自分のできる精一杯のことを持って、神に償いました。