聖書箇所 ルカ11:5~10
11:5 また、イエスはこう言われた。「あなたがたのうちのだれかに友だちがいて、その人のところに真夜中に行き、次のように言ったとします。『友よ、パンを三つ貸してくれないか。
11:6 友人が旅の途中、私のところに来たのだが、出してやるものがないのだ。』
11:7 すると、その友だちは家の中からこう答えるでしょう。『面倒をかけないでほしい。もう戸を閉めてしまったし、子どもたちも私と一緒に床に入っている。起きて、何かをあげることはできない。』
11:8 あなたがたに言います。この人は、友だちだからというだけでは、起きて何かをあげることはしないでしょう。しかし、友だちのしつこさのゆえなら起き上がり、必要なものを何でもあげるでしょう。
11:9 ですから、あなたがたに言います。求めなさい。そうすれば与えられます。探しなさい。そうすれば見出します。たたきなさい。そうすれば開かれます。
11:10 だれでも、求める者は手に入れ、探す者は見出し、たたく者には開かれます。
説教要旨
主イエスは「祈りの内容」に続いてたとえ話をなされ「祈りの態度」を教えられました。ある人のところに真夜中に旅の途中の友人が不意に訪れてきました。でも、その旅人をもてなす食べ物が家に全くありませんでした。近所の友人のところに真夜中に行き、「友よ、パンを三つ貸してくれないか」と願い出たのです。すると、その近所の友人は戸を開けることなく、家の中から面倒のゆえに断ったのです。主イエスは仰せられました。「この人は、友だちだからというだけでは、起きて何かをあげることはしないでしょう。しかし、友だちのしつこさのゆえなら起き上がり、必要なものを何でもあげるでしょう(v8)」
「しつこさのゆえ(v8)」他の聖書の訳では「図々しく頼む」「あつかましいほどのしつこさ」「執拗さ」と訳されています。「図々しく祈る」「あつかましく祈る」「執拗に祈る」、祈りの態度を教えられました。ですから続けて「求めなさい」「探しなさい」「たたきなさい」と三回も繰り返し(v9)、執拗に、あつかましく祈り求めることをお教えになられました。確かに神さまは主権者であられますから、神さまの前に身を低くすることなく、祈りによって神さまを自分の願い通りに動かそうとすることや神さまを説き伏せようとすることは祈りの態度としてふさわしくないでしょう。その通りなのですが、でも、イエスさまは「しつこさ」という言葉をお使いになられてまで、神さまに求め続けること、忍耐強く、根気よく祈ることをお教えになられました。主イエスは私たちをご存知だからでしょう。祈っても何の光も見えてこないと祈らなくなってしまう、あきらめてしまう。そして、心配や思い煩いに満ちてしまう。冷静さを失いただ自分の思いや考えによって動き、人を傷つけたりしてしまうのです。そんな私たちであることを主イエスはご存知であられるので、ここで「しつこさ」との否定的な言葉を使われてまで根気よく、あきらめずに祈ることを教えられたのです。(ルカ18:1~9、詩篇13篇、Ⅱコリント12:7~8参照)聖書が教える祈りは、答えが与えられない時や光が見えてこない時、なお神さまを切に求めていく祈りです。忍耐強く、根気よく祈っていく祈りです。それが祈りの態度です。祈りの姿勢です。そして、「根気よく祈っていく」ということの中には、根気よく祈りながら自ら行動していくことも大切なこととして含まれています。「与えられます(v9)」と「開かれます(v9)」は受身形ですが、「見出します(v9)」は能動形で自分が見つけていくのです。根気よく祈る祈りの姿とは一切の人間の側の行動や努力を否定しているのではありません。根気よく祈りながら自分で働きをなしていく、学びをなしていく、努めていく、それが祈りの態度であるのです。
なぜ、私たちは、そのようにあきらめず、根気よく祈るのでしょうか。友だち同士の関係でも、しつこさのゆえなら起きて必要なものをあげると言われています。まして、私たちが求める相手は父なる神であられるからです。主イエスは「パンを三つ貸してくれないか(v5)」の願いに「必要なものを何でもあげるでしょう(v8)」と仰せらました。天の父なる神は、私たちの考えや思う以上の良きもの、真の必要なものを与えてくださるお方であられるからです。
今、私たちの祈りの生活において、祈らなくなってしまっていることはないでしょうか。主の証がなされることにおいて。神の国とは程遠いこの世の様々な悲しみについて。自らの体と魂について。また、『主の祈り』は「私たちの」祈りであり、このたとえ話は旅人の友人の食べ物を求めるものでしたが、伴侶の体調や仕事について。子どもの信仰の継承や救いについて。兄弟姉妹の信仰の回復について。主イエスの愛の御言葉に促され、あきらめてしまっている祈りをもう一度、主の前に持っていきましょう。